第1回

第1回 草花と四季をめぐる「本」~「草の辞典-野の花・道の草」

植物のことを学び・知ることはもちろん、ゆったりとした気持ちで花を眺め、癒される、そんな「本」を、ブックコーディネーター・ライターの尾崎実帆子さんが紹介してきます。

「草の辞典―野の花・道の草」

森乃おと著、ささきみえこイラスト
雷鳥社、2017、ISBN978-4844137108
森乃おと著、ささきみえこイラスト
雷鳥社、2017、ISBN978-4844137108

「草の辞典ー野の花・道の草」を手にしたときにまず感じるのは、手のひらにコロンとフィットする可愛らしいサイズ感と、草花の絵が描かれたトレーシングペーパーのように薄く透けたカバーの愛おしい質感。本の厚みや重み、さわり心地までも楽しむ“モノ”としての本の魅力を放っています。

本書の著者は植物学者ではなく「俳人」の森乃おとさん。だから「図鑑」ではなく「辞典」なのですね。森乃おとさんは、和の年中行事や手仕事、そして雑草をこよなく愛する方とのこと。
雑草はどこにでも身近に生えてきて、庭づくりをする方々には邪魔モノ扱いされてしまうものですが、もちろんそれぞれに名前があり、一つひとつの花や葉を見れば 可憐な表情を見せてくれます。

そんな「野の花・道の草」を優しい色合いとやわらかなタッチで描いているのは、帯広出身のイラストレーター・刺繍作家のささきみえこさん。やわらかな色調の写真と相まって、まるで絵本のような感覚で楽しめる“辞典”です。

「野の花・道の草」が季節ごとに紹介されている本編は、分類や名前の由来、花言葉などが添えられていて読み応えがあります。

さらに心をくすぐられるのが「みちくさをたのしむ」と題したコラム。野の花や草を調理したり、お茶として味わったり、化粧水や入浴剤をつくって楽しむなど、生活に野の草花を取り入れるヒントがいっぱい。著者によると、自然のままに生きる野の草花には“大地の恵み”が秘められているそう。ひと手間かけて楽しむのはもちろん、ただシンプルに飾ったり束ねてブーケにするだけでも、野生のエネルギーを少し分けてもらえそうです。

これからの季節、土の香りとともに次々と力強く、野の草花が陽の光に向かって伸び始めます。この「草の辞典」で見知った野の草花に出会ったときには、「冬の間はどうしていたの?」と聞いてみたくなりますね。
俳人の著者らしく、草にまつわる熟語や季語、そして野の草花を使った古今東西の名言を紹介している「草のこと葉」と「花のこと葉」というコーナーも想像力が掻き立てられます。いつも手元に置いておいて、パッと開いたところを読んだり眺めるだけでも、日々の生活に潤いがもたらされそうな一冊です。

この記事を書いた人

尾崎 実帆子

尾崎 実帆子

ブックコーディネーター・ライター。「Sapporo Book Coordinate (さっぽろブックコーディネート)」代表。「適“本”適所」をコンセプトに、カフェやショップ、商業施設、イベント会場など、街のさまざまな場所で本を買える仕組み作りに注力。本にまつわるイベントを企画開催したり、本の楽しさを伝える書評執筆を行なう。北海道新聞「親と子サンデー ほん」を2012年より執筆ほか、絵本・児童書の書評掲載、雑誌やラジオなどのメディアで書評掲出。札幌インストラクターガイド登録講師、絵本・児童文学研究センター正会員。

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