第5回

第5回 草花と四季をめぐる「本」~「魔女のシークレット・ガーデン」

植物のことを学び・知ることはもちろん、ゆったりとした気持ちで花を眺め、癒される、そんな「本」を、ブックコーディネーター・ライターの尾崎実帆子さんが紹介していきます。

「魔女のシークレット・ガーデン」

飯島 都陽子(著・絵)
山と溪谷社、2018、ISBN978-4635810142
飯島 都陽子(著・絵)
山と溪谷社、2018、ISBN978-4635810142

「魔女」と聞いてイメージするのは、どんな人でしょうか? 医学が発達する前、人々は草花の力を使って病を治したり痛みを癒してきました。その自然の力を見極め、薬草として活用する智慧を備えた女性が、「魔女」と呼ばれていたそうです。
本書は横浜元町の「ハーブと魔女の専門店『グリーンサム』」店主による、魔女と植物にまつわるエッセイ兼実用書。見開きページごとの挿し絵はすべて筆者によるもので、草花を描く温かみのあるタッチと、時折登場する魔女や動物たちの様子がどこかコミカルで絵本のような雰囲気を醸し出しています。

前半は「魔女の庭」のさまざまな効能を持つハーブが春夏編と秋冬編に分かれて紹介されています。今の季節にぴったりなのが「秋のメランコリーを吹き飛ばすハーブ」。特に北海道では短かった夏が終わり、日暮れが早まり、長い冬の訪れを予感させるシーズン。気圧の変化も著しく、気分や体調も優れないことが多くなりがちですね。
掲載されているハーブの種類については本書をお読みいただくとして、ハーブの効用はもちろん、その歴史や由来などもわかりやすく記述されています。観賞用として知られる花が皮膚疾患に役立つなど、本書にはちょっとした豆知識がふんだんに盛り込まれていて、読むうちにふと魔女にこっそり魔法を教えてもらっているような気分になれるのではないでしょうか。

後半は「魔女の森&原野」。魔女が求めた樹木や木の実、きのこなどが紹介されています。植物の力が最も高まるのは明け方であると信じられていたそうで、夜明け前の暗い森を、ハーブで編んだ帽子と夜露をしのぐマントを纏(まと)い、薬草カゴを持ち歩く魔女の姿は、やはりどこか不穏で恐れられていたのがわかる気がします。

季節の移り変わりを繊細に感じ取り、植物とともに生き、植物の力を信じた魔女たちから私たちも智慧を借り、今の生活に取り入れてみたいですね。

魔女のシークレット・ガーデン
魔女のシークレット・ガーデン

この記事を書いた人

尾崎 実帆子

尾崎 実帆子

ブックコーディネーター・ライター。「Sapporo Book Coordinate (さっぽろブックコーディネート)」代表。「適“本”適所」をコンセプトに、カフェやショップ、商業施設、イベント会場など、街のさまざまな場所で本を買える仕組み作りに注力。本にまつわるイベントを企画開催したり、本の楽しさを伝える書評執筆を行なう。北海道新聞「親と子サンデー ほん」を2012年より執筆ほか、絵本・児童書の書評掲載、雑誌やラジオなどのメディアで書評掲出。札幌インストラクターガイド登録講師、絵本・児童文学研究センター正会員。

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