
わたしの庭どうぐ <第8回> ガーデナーにとって理想の「帽子」
武藤 良幸
ガーデニングを快適に! 使いやすい道具やおしゃれなガーデニングウェアを身に着けて、庭しごとを楽しく行ないましょう。「庭どうぐ」の基本の選び方、豆知識、おすすめなどを、園芸グッズの企画・開発も行なう武藤良幸さんが伝授します。
いよいよ12月。今年のガーデニングはいかがでしたか? 雪の下においてきたため息や後悔があったとしても、それはきっと芽が出る種になるはず。まずは今シーズン、お疲れさまでした。
さて、タイトルの「ロッパー」という庭道具に、ピンとくる人は少ないかもしれません。ロッパーとは、長いハンドルを持つ「太枝切りバサミ」を意味します。私が子どもの頃に見ていた天才バカボンというテレビアニメで、植木屋さんでもあるバカボンのパパが小気味よく植木を刈り込んでいた大きなハサミにも似ていますが、あちらは葉や小枝を刈るための刈込みバサミ(葉刈りバサミ)。このロッパーは、直径3~5cmほどの太い枝をカットする枝切りです。
同じ枝切りでも片手で持つ剪定バサミと違い、両手の力を使って太い枝をカットします。また、長いハンドルを持つ手を伸ばせば、2.5~3mほどの高さにある枝を脚立に上らずカットできるのも便利。ちょっとした剪定でロッパーを使えばノコギリや脚立を持ち出さずに済み、時短にもってこいと言える庭道具かもしれません。
ところがそんな便利なロッパー、実はプロの植木屋さんや庭師さんが剪定に使っているシーンを見ることはあまりありません。なぜなら彼らにとってロッパーは大雑把な庭道具というイメージがあり、剪定用というより、剪定をするときの補助的に使う道具という位置づけが多いようです。
ロッパーは、そのサイズやかかる力が大きいため、刃は鉈(ナタ)のような厚みがあり、大きな負荷に強い構造をしています。そのため、剪定の基本でもある幹すれすれで枝をカットしたり、切り口をスパッときれいにカットすることが苦手。これが大雑把というイメージにつ繋(つな)がっているように思います。
プロとしてロッパーを剪定に使うなら、その切り口をノコギリで整えるというひと手間が必要であり、そこが面倒だと考える人もいるようです。
じゃあ、剪定の補助的な使い方とは何か。それは、切り落とした枝を片づけやすくするため、ロッパーで短く刻むという使い方です。
腕に負担がかかるノコギリや動力が必要なチェーンソーは使わず、落ちた枝を両手の力でザクザクと切り刻んでいきます。プロじゃなくても札幌市内にお住まいのガーデナーなら、自宅の庭で剪定した枝を長さ50cm以下に切り詰めれば、月1回の無料収集ゴミとして出すことができますね(詳しくは札幌市ほか、各自治体のゴミ収集ガイドをご参照ください)。
もちろんロッパーは剪定に使えない訳ではなく、バラやニセアカシアのようなトゲのある枝の剪定、灌木やイタドリや竹の伐採、そして薪ストーブやキャンプの薪や焚きつけ用に枯れ枝を刻むのにも便利。大雑把と書きましたが、“パワーツール”としてのロッパーは家庭でも重宝する庭道具です。
最後にロッパーの注意点を二つ。一つめは、太くて長い枝には結構な重さがあります。頭の上でカットした枝が落ちてきてケガをしたり、周囲の構築物を破損したりする場合もあります。両手でハンドルを持つロッパーは、ノコギリのように片方の手で枝をつかんでコントロールできないため、枝が落ちる範囲への配慮が必要です。長い枝は一度に切り落とすのではなく、数回に分けて切り落とすのがコツです。
二つめは、ロッパーでカットできそうにない太さの枝には、ノコギリを使いましょう。勢い任せで力を入れると、ロッパー自体や使う人の腕を傷めてしまう原因になります。ロッパーの説明書に指定されている直径以上の枝をカットしない、というあきらめも大切です。
今年のコラムはこれが書き納め。ここまでお読みいただきまして、ありがとうございました。どうぞ素敵な年始をお迎えください。
「momiji合同会社」代表。「momiji(もみじ)」は人と園芸、人と庭をつなぐための会社。若い園芸家や庭師を育て、彼らの道具や新しいガーデニンググッズの企画・販売を行なう。また、おしゃれな道具など介し、園芸・ガーデニングの普及活動に努めている。
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