
わたしの庭どうぐ <第8回> ガーデナーにとって理想の「帽子」
武藤 良幸
ガーデニングを快適に! 使いやすい道具やおしゃれなガーデニングウェアを身に着けて、庭しごとを楽しく行ないましょう。「庭どうぐ」の基本の選び方、豆知識、おすすめなどを、園芸グッズの企画・開発も行なう武藤良幸さんが伝授します。
SDGsへの関心が影響しているのか、庭の中に求める安心・安全、そこにある生き物の多様性を強く意識するガーデナーが増えていると実感しています。
少し前のガーデニングですと、庭で使う化成肥料や農薬といったケミカルな物質そのものがクローズアップされがちでしたが、今は人にも昆虫にも地球にも優しいアプローチに注目が集まっていて、多くのガーデナーがそれぞれのスタイルで庭の環境に向き合っているようです。
庭道具の視点なら、丈夫で長持ち。たとえ壊れても、修理して使いたくなるほど愛着が湧くものを手にすることもアプローチの一つといえるかもしれませんね。
ただ、そんな意識ばかりを気にしすぎると、ガーデニングのおおらかで楽しい部分を見過ごしてしまうこともあるかもしれません。無理をせずに小さなことからチャレンジして、自分に合ったアプローチを継続できることが大事だと思います。
例えば、ものぐさな私が実践したチャレンジを紹介しますと、それは「安くて気軽なプラスチック紐(ひも)を庭で使うのをやめる」という、ほんの小さな意識でした。
植物を誘引したり、支柱や冬囲いの結束や剪定枝をまとめたり、余った肥料袋の口を縛ったり、庭どうぐをフックに引っ掛けるためなど、ガーデニングにとって紐はなくてはならない庭道具です。
私の場合、お手頃とか腐れなくて丈夫そう…というイメージだけで、ビニールやナイロン製のプラスチック紐を庭で使うことがありましたが、ある日、それらの小さな切れ端や劣化した古い紐が土に混じっているのを目の当たりにして、「これではいけない!」と感じたのがきっかけです。
しっかりと結んだはずのプラスチック紐は紫外線や温度変化に弱く、屋外では意外と早く切れて土に落ち、そのうえ土の中ではしぶとく残り続け、それを発見したガーデナーとミミズの舌打ちに遭います。
シュロ紐や荒縄といった植物の繊維でつくられた園芸紐は以前からありましたが、太さや固さの理由から、やわらかい茎枝やつる植物を誘引するときには、繊細で優しい結びには不向きです。結びやすくて丈夫で、そして適度なやわらかさがあって土に落ちても朽ちやすい自然素材の紐。それには「麻紐」がぴったりでした。
麻紐は細くて丈夫で結びやすくて携帯性もよく、ガーデナーのツールポーチに忍ばせておくにはもってこいといえるでしょう。
私が使うのは、繊維から染料まで天然素材のみでつくられている、スコットランドの老舗メーカー「Nutscene(ナッツシーン)」の麻紐。ガーデナーのニーズと、土に落ちた紐が微生物に分解されるまでをきちんと理解して物づくりされていて、イギリスのエコガーデナーから大きな信頼を得ているメーカーです。
ナチュラルからビビットまでカラーリングがとても豊富で、結ぶという単純作業にちょっとした楽しさを加えてくれそうな遊び心も感じられます。庭使いだけではなく、ラッピングや鉢を吊るマクラメ編みのような手芸用としても人気です。
こだわりの製造方法と強靭(きょうじん)な黄麻(ジュート)を原料にしたNutsceneの麻紐は、紬ぎにムラがなく太さが均一。麻紐ならクラフト用も園芸用もどれも同じと思われるかもしれませんが、厳選された黄麻の強くてなめらかな質感と均一な紬ぎによる結びやすさはNutsceneならでは。
私はSDGsを少しだけ意識して、紐からはじめてみました。皆さんも自分にできそうな小さなアプローチを探してみてはいかがでしょう。ガーデナーたちの小さな行動が庭に関わる企業の意識や商品も変えて、さらには庭や植物、土がよい状態で未来に続くきっかけにつながるといいな、と思います。
最後に、ほどけた紐をまとめ直すには、指を使って巻き直すと便利です。まとめ方をお伝えしておきましょう。
1. 手の平を自分に向け、紐の端を人差し指と中指で挟んだら、親指と小指の間を8の字を描くように紐をかけていきます。
2. 紐の余りが 30cmほどになったら親指に巻いた紐を外します。そして 30cmほどの紐を8の字の真ん中あたりにくるくると数回巻いて固く結んで終わり。
3. 引き出すのは、人差し指と中指で挟んでいた方の紐です。
この方法ですと、ちょっとした作業時にガーデンエプロンのポケットやツールポーチなどに入れて携帯するのにも、小さくまとめられてよいですね。
「momiji合同会社」代表。「momiji(もみじ)」は人と園芸、人と庭をつなぐための会社。若い園芸家や庭師を育て、彼らの道具や新しいガーデニンググッズの企画・販売を行なう。また、おしゃれな道具など介し、園芸・ガーデニングの普及活動に努めている。
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