第15回

北海道の花育て【3月】宿根草・草花 ~雪国で宿根草を楽しむ!考え方の基本

北海道のバラや宿根草、芝生や樹木、病害虫についてなど季節のお手入れ・管理をプロの皆さんが伝授。ここでは、「宿根草・草花」についてお伝えします。

教えてくれる人

高林 初さん
苫小牧市にある観光庭園「イコロの森」勤務。宿根草のガーデンデザイン、園内の管理などを担当する。

高林 初さん(イコロの森)
高林 初さん(イコロの森)

宿根草にとっての北海道の気候と環境

まだまだ白い雪に覆われながらも、どことなく春めいた雰囲気のする日もある北海道。ガーデニングシーズンが目前の今、あらためて雪国で宿根草を楽しむための考え方の基本をおさらいしておきましょう。

 

●宿根草とは…?

宿根草は植えっぱなしで冬を越し、毎年楽しむことができる草花です。開花する季節や期間の長さは種類によって異なります。春から秋まで楽しむために、いろんな種類の宿根草を組み合わせるのがコツ。季節による気候の移り変わりが顕著な北海道ならではの楽しみ方ができます。

「イコロの森」の春のボーダー。鮮やかな明るい花色が春らしい
「イコロの森」の春のボーダー。鮮やかな明るい花色が春らしい
夏のボーダーの様子。大きく茂り、宿根草の花々が色彩豊かなに咲き続いてく
夏のボーダーの様子。大きく茂り、宿根草の花々が色彩豊かなに咲き続いてく
秋のボーダー。穂状の花やシックな秋色の花、葉色の移ろいなど秋ならではの趣き
秋のボーダー。穂状の花やシックな秋色の花、葉色の移ろいなど秋ならではの趣き

 

●冷涼で湿度の低い北海道の夏

最近人気の高い宿根草の多くは、北米やヨーロッパでも楽しまれているものがほとんど。高温多湿の本州では憧れの花の夏越しに苦労しますが、夏の気候が似ている北海道では育てやすいものが多いのです。

イギリスの宿根草花壇(RHSウィズリー)
エキナセアやロシアンセージなどが大胆に植えられ、まるで自然にできた草原のような雰囲気
イギリスの宿根草花壇(RHSウィズリー)
エキナセアやロシアンセージなどが大胆に植えられ、まるで自然にできた草原のような雰囲気
恵庭 花の拠点「はなふる」の宿根草花壇
アリウムやサルビア、エキナケアに加え、グラス類を効果的に配置し、自然らしさを意識した植栽(植栽デザイン:イコロの森)
恵庭 花の拠点「はなふる」の宿根草花壇
アリウムやサルビア、エキナケアに加え、グラス類を効果的に配置し、自然らしさを意識した植栽(植栽デザイン:イコロの森)

 

●耐寒性について

一方、冬は寒さが厳しい北海道。寒さに強い特性を持つ種類を選ぶことが最も大切。書籍やウェブサイトでは、「寒さに強い」や「耐寒性あり」という説明もありますが、その多くが本州の冬を前提として書かれているもので、北海道ほどの寒さでは耐えられないものがあるので注意が必要です。「北海道でも越冬できるのか?」を確認しましょう。
寒さにどの程度強いのかを示す指標として、耐寒性区分番号(ハーディネスナンバー)を表示してある場合もあります。数字が低いほど寒さに強いことを表していて、道内でも地域差はありますが、「6」以下のものを選ぶとよいでしょう。

「イコロの森」のポップ。耐寒性区分が記載されている場合は、参考にすることができる
「イコロの森」のポップ。耐寒性区分が記載されている場合は、参考にすることができる

 

●雪は味方か? 敵か?

北海道の冬につきものなのが雪。庭や公園では、木々に冬囲いをしている風景を目にしますが、その目的は木々を寒さや雪の重さから守ること。さて、草花である宿根草はどうでしょうか…?
宿根草の多くは冬に地上部を枯らし、土の中の根っこだけで越冬します。雪が降る前に地上部を刈り取り、あとは雪の下で休眠させるだけ。花壇や庭を除雪する必要はないばかりか、宿根草花壇は排雪場所としても利用できます。いったん雪が覆えば、雪の下の温度は0℃付近で安定するので、地中で眠る根も安心して冬越できるのです。

積雪のおかげで地中の温度は安定し、根が安心して越冬できる
積雪のおかげで地中の温度は安定し、根が安心して越冬できる

 

●ただ春を待つ

春が近づくと花壇の雪が解けるのが待ちきれませんが、特に何もしなくて大丈夫。雪が解けるのをただ待ちましょう。
「雪解け水が、根腐れの原因になるのでは?」と心配になりますが、土壌改良を施した水はけのよい花壇なら何も心配いりません。逆にそのような結果になってしまった場合は、夏の間に土壌改良を行なった方がよいでしょう。

イコロの森のボーダーも、春先の雪解け時には自然と雪がなくなるのをただ待つだけ
イコロの森のボーダーも、春先の雪解け時には自然と雪がなくなるのをただ待つだけ

今回お伝えした雪国で宿根草を楽しむための考え方の基本を参考にして、春に向けて宿根草の庭プランを立てたり、シーズンが始まったら庭づくりを楽しんでください。

この記事を書いた人

高林 初

高林 初

英国Writtle College(リトルカレッジ)にてガーデンデザインを学ぶ。現在は、苫小牧市にある「イコロの森」の勤務、ヘッドガーデナー 。設計からメンテナンスまで庭づくりの幅広い経験をもとに、宿根草ガーデンの管理・栽培等を担当。

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