第10回

第10回 草花と四季をめぐる「本」~「百花帖」

植物のことを学び・知ることはもちろん、ゆったりとした気持ちで花を眺め、癒される、そんな「本」を、ブックコーディネーター・ライターの尾崎実帆子さんが紹介していきます。

「百花帖 ―もっと知りたい 近づきたい 100の花たち。」

雨宮 ゆか (著)、雨宮 秀也 (写真)
株式会社エクスナレッジ
2021年 ISBN 978-4767829357
雨宮 ゆか (著)、雨宮 秀也 (写真)
株式会社エクスナレッジ
2021年 ISBN 978-4767829357

著者は花の教室「日々花(https://www.hibihana.com)」を主宰する「挿花家」の雨宮ゆかさん。季節の草花を生活に取り入れる楽しみ方を伝えるワークショップを開いたり、雑誌などのスタイリングでも活躍されています。
本書は“身近に感じてもらえそう”という基準で雨宮さんがセレクトした100種類のお花を美しい写真で紹介するフォトエッセイ。白を背景に撮った花の写真と、それぞれの花の特徴を生かしてセンスよく器(うつわ)に挿した写真がレイアウトされています。器と合わせることで花の表情が生き生きとしたニュアンスをまとい、花自身もスッと背筋をのばして凛とした姿を見せてくれているかのようです。

「花の向こうにみるものは」と題した前書きに、「この本では、百の花を通じて、その向こうに見えること・ものを記してみました」とあるように、花の性質や生け方、器の選び方などの実用的な情報にとどまらず、それぞれの花について季節を感じさせるエピソードや花からイメージをふくらませて感じたことなどについて、小気味よいテンポのショートエッセイが添えられています。
例えば「勿忘草(わすれなぐさ)」の項では、“水色のランドセルを背負ってくっついたり離れたりしながら楽しげに歩く子どもたちを見ていると、勿忘草の花を連想する”など発想が豊かで想像力がくすぐられます。勿忘草は水に生けてからも丈が伸び小さな花を次々と咲かせ、その姿が心も体も成長まっただなかの子どもたちを思わせるのだそう。雨宮さんの視点を通して花を眺めると、新鮮な気持ちで花の新しい魅力に出会えるような気がします。

花に合わせている器は作家ものの花器がメインではありますが、リキュールカップやビアマグ、外国製の酒瓶を使っていることも。一輪の花が工夫しだいで日常の特別なワンシーンになる……真似してみたい花の飾り方がたくさん見つかります。

「百花帖」と、「百葉帖 ―あらためて知りたい 見つめたい 100の葉たち。」
「百花帖」と、「百葉帖 ―あらためて知りたい 見つめたい 100の葉たち。」

この記事を書いた人

尾崎 実帆子

尾崎 実帆子

ブックコーディネーター・ライター。「Sapporo Book Coordinate (さっぽろブックコーディネート)」代表。「適“本”適所」をコンセプトに、カフェやショップ、商業施設、イベント会場など、街のさまざまな場所で本を買える仕組み作りに注力。本にまつわるイベントを企画開催したり、本の楽しさを伝える書評執筆を行なう。北海道新聞「親と子サンデー ほん」を2012年より執筆ほか、絵本・児童書の書評掲載、雑誌やラジオなどのメディアで書評掲出。札幌インストラクターガイド登録講師、絵本・児童文学研究センター正会員。

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