第9回

ローズガーデンダイアリー<第9回>春の準備とスタンダード・ローズ

白い恋人パークから「ローズガーデン」で咲くバラたちや、シーズンごとのお手入れの様子などご紹介。北海道で育つバラの品種や、実際に育てて感じるその性質など、ぜひ参考にしてください。プロならではのテクニックなども聞けそうです。

春に向けた準備と
管理しているスタンダード・ローズ

今年の冬は雪が少ないと感じていましたがやはり帳尻が合うようで、2月に入ると昨年のようなドカ雪にはならなかったもののそれなりの降雪の日が多くありました。2月下旬から白い恋人パーク ローズガーデン内の通路の排雪作業を始めて、シーズンに向けての準備が着々と進んでいます。

2月下旬のローズガーデンの様子。春に向けて通路の排雪を開始
2月下旬のローズガーデンの様子。春に向けて通路の排雪を開始

白い恋人パークでは、中庭の植栽に使用する一年草や宿根草のほとんどをガーデンスタッフが育てています。それらを温室で管理しているのですが、今シーズン使用する植物のタネまきとポット上げ作業が忙しくなってきました。温室内の気温も上がってきて、お日様にも当たり一気に成長も早くなって春を間近に感じる作業となっています。

温室内では花苗がすくすくと育っている
温室内では花苗がすくすくと育っている

白い恋人パークで
管理しているスタンダード・ローズ

鉢植えのスタンダード・ローズが、白い恋人パークの各所を魅力的に装う
鉢植えのスタンダード・ローズが、白い恋人パークの各所を魅力的に装う

今回は、北国でなかなか見ることが少ないと思われる「スタンダード・ローズ」の説明をしたいと思います。
スタンダード・ローズは、スタンダード仕立てされたバラのことをいいます。北国では野外での越冬が難しいので、温室設備などのある屋内で越冬をさせる必要があります。野外でほかの鉢バラと同じように鉢を寝させて越冬をさせたこともありますが、何本かは冬を越せずに枯れさせてしまった経験があります。
なぜ越冬が難しいかといいますと、スタンダード・ローズは根から幹の部分は台木(ノイバラ)を使用しており、上部でその品種を接木しています。水は根から台木を通って上部へ吸い上げるので、台木の内部で凍ってしまって枯れてしまう、また、上部に接木しているバラはHT(ハイブリット・ティ)のため、品種にもよりますが耐寒性がそれほど強くないので枯れてしまう恐れがあるからです。

白い恋人パークのスタンダード・ローズは開園した当初から鉢で管理して18年目を迎え、台木部分もかなり老朽化はしていますが、冬期間は温室で管理をしているので地植えのバラよりもひと足先に花を咲かせくれます。ローズガーデンでは雪解け後に咲くチューリップが終わって球根を堀り上げたあと、スタンダード・ローズを鉢のままガーデンに植えたり、パーク内に設置したりして皆さんに楽しんでいただています。

 

パーク内を彩る
スタンダード・ローズ品種

白い恋人パークで管理をしているスタンダード・ローズの品種をご紹介したいと思います。初夏には素敵な花を咲かせて、パーク内の各所を彩ってくれます。

●シャルル ドゥ ゴール Charles de Gaulle
系統:ハイブリット・ティ(HT) 作出:1974年 フランス メイアン
香り:強香(ブルー系) 
さわやかなブルー系の香りがとても強く、ずっと香りを感じていたいと思う品種。半剣弁高芯咲きで濃いラベンダー色は、ローズガーデンの中でも目を引きます。少し遅咲きですが四季咲き性が強く、繰り返しよく咲いてくれます。名前は、フランス第18代大統領の名前から。

シャルル ドゥ ゴール 
シャルル ドゥ ゴール 

 

●イングリット バーグマン Ingrid Bergman
系統:ハイブリット・ティ(HT) 作出:1984年 デンマーク ポールセン
香り:中香(ティー系)
2000年に世界バラ会議で殿堂入りをした銘花のバラです。ローズガーデンはほぼロゼット咲きやカップ咲きが多いイングリッシュローズがメインのため、HTの深紅で剣弁高芯咲きのバラは目立つはずですが、ローズガーデンの赤ゾーンは比較的背が高くなる品種が多く、スタンダード・ローズで高さはあるはずなのですがそれほど目立たないかもしれません。お越しの際は、ぜひ探してみてください。名前は、スウェーデン出身のハリウッド女優の名前から。

イングリット バーグマン 
イングリット バーグマン 

 

●ヘンリー フォンダ Henry Fonda
系統:ハイブリット・ティ(HT) 作出:1996年 アメリカ クリスチャンセン
香り:中香(ティー系)
目が覚めるような純黄色の花は大輪剣弁高芯咲きで、一番花は特に黄色が濃く出るように感じます。イングリッシュローズの黄色に咲くバラは、淡い黄色が多いのでひと際目立ちます。輝くような大きな照葉も個人的には気に入っており、病害虫も定期的に行なう活力剤散布で対処し、葉を落とすことなく秋まで管理ができています。名前は、黄色のバラをこよなく愛していた米国の俳優ヘンリー・フォンダ氏に捧げて名付けられました。

ヘンリー フォンダ
ヘンリー フォンダ

 

●レーシー レディ Racy Lady
系統:ハイブリット・ティ(HT) 作出:1999年 イギリス ディクソン
香り:中香(ティー)
写真でもわかるように蕾(つぼみ)のときは薄黄色、開きかけると白色が強くなります。花開くと中心部がレモン色なのも可愛らしいバラです。生育旺盛で、HTらしく秋にぴょんぴょんと枝が伸びて樹形を乱すことがありますが、枝の更新がしやすく育てやすい品種です。名前は、活気にあふれる女性 の意味。

レーシー レディ
レーシー レディ

白い恋人パークで管理をしているスタンダード・ローズは約20本あります。イングリッシュローズとはまた違った咲き方をするこれらのバラを、バラの開花シーズンになりましらぜひ楽しんでいただきたいです。

この記事を書いた人

田川昌広

2007年に石屋製菓入社。それまでは植物に興味がなかったが、入社を機に植物を手がけることに目覚める。「白い恋人パーク」のローズガーデンを含め、園内のすべてのバラを担当する。イングリッシュローズをメインに管理を行ない、バラの魅力を広めている。

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