
わたしの庭どうぐ <第12回> ソフトに庭ゴミをかき集める「ハンドレーキ」
武藤 良幸
ガーデニングを快適に! 使いやすい道具やおしゃれなガーデニングウェアを身に着けて、庭しごとを楽しく行ないましょう。「庭どうぐ」の基本の選び方、豆知識、おすすめなどを、園芸グッズの企画・開発も行なう武藤良幸さんが伝授します。
庭にホースがあるし、「ジョウロは持っていない」というガーデナーは意外に多いと思います。ベランダガーデンや鉢植えの水やりならともかく、広い庭だとジョウロよりもホースとノズルを使う方が便利ですよね。ところが、庭づかいでもあえてジョウロにこだわるガーデナーがそこそこいることをご存じでしょうか。
ジョウロにこだわる理由…、もちろん人それぞれだと思いますが、なかには「植物を傷めたくない」という優しさでジョウロを使うガーデナーがいます。その優しさは、長いホースで草花をなぎ倒してしまった後悔や、強い水圧で小さな苗を吹き飛ばしてしまった反省など、私と同じような経験があるのかもしれません。
私のそんな妄想は別としても、ジョウロとホースを用途や場所によって使い分けるガーデナーはベテランほど多く見られます。たくさんの水を必要とする芝や樹木への水やりにはおすすめできませんが、タネまきしたばかりの菜園や花苗を植えたばかりの花壇、真夏の葉水(乾燥や暑気にさらされた葉に水をかけること)、そしてホースの取り回しが難しい場所の水やりにもジョウロは活躍してくれます。
一般的なジョウロは、水を溜めるタンク、持ち手、水が通るパイプ、水の出口という4つのパーツで構成されています。水の出口には、シャワー状の水が出る蓮口(ハスグチ:蓮の花托(かたく※)に似ていることが由来のようです。ちなみに欧米では蓮よりもバラを想像したのか、ローズと呼ばれています)が付いていて、蓮口は取り外しできるタイプがほとんどです。
ガーデナーや盆栽家など、プロに愛用される確かなつくりのジョウロから出るシャワーは、「絹糸のようなシャワー」と形容されることがあり、植物に優しい糸雨(しう)のような水が出ます。これは蓮口に空いた穴が単に小さいという理由だけではなく、ジョウロを構成しているパイプの長さや持ち手の形も関係しているのだそう。言い換えると絹糸のようなシャワーが出るよいジョウロというのは、持ちやすくて注ぎやすいジョウロなのかもしれません。
私が使っているのは、英国(イギリス)のジョウロメーカー HAWS(ホーズ)のハンディデラックスカンというプラスチック製ジョウロ。ポリプロピレン樹脂のボディに真鍮の蓮口が付いていて、容量は7Lです。まさに絹糸のような優しいシャワーが出るジョウロを探して手に入れましたが、適度なやわらかさがあるポリプロピレンのボディは軽く、多少の衝撃でも割れない丈夫さも気に入っています。
ちなみにHAWSは、130年以上昔の創業当時から今もスチール製のジョウロがブランドを代表する人気商品ですが、私はスチール製よりはるかに軽いポリプロピレン製を選びました。片手でも両手でも持ちやすくて、庭の緑に映える深い赤色も気に入っています。手にするだけでなんだかワクワクさせてくれる相棒です。ちなみに庭で使うなら5~8Lの容量がおすすめ。
最後に、ジョウロを使うメリットをもう一つ。ジョウロで水やりをしていると、庭や植物のちょっとした変化に気づきやすくなります。ホースよりもジョウロを使うことで人と植物の距離が近くなるのと、強い水圧のホースを扱う感覚とは違った心の余裕が持てるからかもしれません。
葉に艶がない、アブラムシがついている、雑草が発芽してきたなどなど…小さなサインを見逃さないのはとても大切なこと。ジョウロひとつで植物や庭への向き合い方が変わるかもしれませんね。
「momiji合同会社」代表。「momiji(もみじ)」は人と園芸、人と庭をつなぐための会社。若い園芸家や庭師を育て、彼らの道具や新しいガーデニンググッズの企画・販売を行なう。また、おしゃれな道具など介し、園芸・ガーデニングの普及活動に努めている。
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