
北海道の花育て【1月】―バラのこと。大株のランブラーローズは今時期でも剪定ができる
曽根 浩太
北海道のバラや宿根草、芝生や樹木、病害虫についてなど季節のお手入れ・管理をプロの皆さんが伝授。ここでは、「宿根草・草花」についてお伝えします。
高林 初さん
苫小牧市にある観光庭園「イコロの森」勤務。宿根草のガーデンデザイン、園内の管理などを担当する。
本格的なガーデニングシーズンが始まりましたね! 宿根草花壇の管理において、基本中の基本は「除草」です。昨年の6月<第6回>にも除草について書きましたが、さらに詳しく除草について掘り下げてみたいと思います。除草を行なう理由やそのタイミング、また雑草のことも知っておけば早めに対処できるでしょう。
●除草とは・・・
「育てたい草花」と「そうでない草花(=雑草)」を区別し整理すること。「育てたい草花」を大切に育てるために、除草はとても大切な作業です。花壇の中で、どの花を育てたいか!が重要となります。育てている花以外は抜き取ることで、育てたい花が健全に大きく成長できるようになります。
【 除草を行う理由 】
・スペースの確保
育てたい花がちゃんと育つことができるようにスペースを確保します。葉や茎が育つ地上はもちろん、目に見えない土の中も根がしっかり育つスペースが必要です。
・栄養の確保
土の中の養分は限られているので、育てたい花にしっかりと行き渡らせたいものです。そうでない草に貴重な栄養を奪われないようにします。
・病虫害を予防
花壇が葉や茎で必要以上に混み合えば通気性が悪くなり、病気や虫が発生しやすくなってしまいます。
・見た目の美しさの維持
美しさの基準は人それぞれではありますが、「育てたい花」が最も美しく映えるよう、花壇を整理しましょう。
●雑草が小さなうちに、少ないうちに!
除草は「先手必勝!」といわれますよね。特にこれから初夏にかけての季節は、「育てたい花」も「雑草」もぐんぐん成長します。雑草が先に大きくなって、スペースや養分を十分奪ってしまったあとでは、せっかくの除草作業も効果は半減。育てている花は雑草にスペースや養分を奪われなければ、もっと大きく成長して花もたくさん咲かせていたはず。北海道の限られたガーデニングシーズンを損してしまいます。春から初夏にかけては、小さな雑草でも見つけたらすぐに取り去りましょう。
●雑草かそうでないのか、見極めが肝心!
雑草という花はありません。すべての草花に名前があり、可愛い花を咲かせるものもあります。また、育てている花がタネを落として芽を出すものもあります。ここでいう”雑草”とは、「花壇のなかで育てない草花」のこと。花壇において、雑草かそうでないかは、育てている本人が決めます。
初心者の方は育てている花の近くにラベルやネームプレートを挿しておけば、間違って抜いてしまうこともありませんね。景観上それが好みでない場合は、小さな竹の棒を花の後ろに挿して目印にするなど、工夫するとよいでしょう。そして、「目印のないものはすべて取り去る」のが最もわかりやすくおすすめの方法です。
また、北海道では次のような種類が、花壇に侵入しやすい!と感じます。これらが小さい時期の姿を覚えておくと、迷わず取り去ることができますよ。
【 花壇に侵入しやすい 8種 】
1.フキ
葉を大きく広げると、育てたい草花を簡単に覆ってしまいます。花を咲かせるようになると、タネもたくさん飛ばすので要注意! 根を太く長く伸ばすので、移植ゴテでしっかり取り去ってください。
2.タンポポ
花を咲かせてタネを飛ばす前に取り去りたいです。ゴボウのように真っ直ぐ下に根が伸びていくので、移植ゴテを根の横に深く刺し、少しずつ浮かせるようにして根ごと取り去ります。
3.スギナ
根が深く広く花壇中に広がり、あらゆるところから芽を出します。見つけたら、なるべく根を掘り進めて取り去りましょう。光合成をできるだけ阻害することで、徐々に弱体化させられます。一度広がると手がつけられないので、まさに先手必勝です!
4.マツヨイグサ
黄色い花は魅力的で花壇に残したいと思う人もいますが、増えてしまうのでまずは処理しましょう。花を育てることに慣れてきたら、花壇全体の色合いやバランスを見ながら残したり、移動したりしながら楽しむのもありです。タンポポと同様で根は下に深く伸びるので、スコップを刺して丁寧に取り去ってください。
5.ヒメジョオン
ぐんぐん伸びて初夏になると白い花を咲かせます。花を咲かせれば来年以降はまた増えるので、早めに取り去るとよいです。
6.ナズナ
春を告げる身近な草花で、春の七草の一つ。小さく可愛らしいけれど、増えすぎているようでしたら取り去った方がよいでしょう。根は浅く取りやすいタイプです。ダッチホウを使って根を浮かせれば、大量のナズナもあっという間に除草できます。
7.カタバミ
ハート形の葉が特徴のカタバミ。葉の色は緑色や赤みを帯びるものなどがあり、黄色い花を咲かせます。地面を這うように増えるタイプは根をしっかりと張ってしまいますが、茎が立ち上がるタイプは取りやすいです。
8.ヒメスイバ
地下茎を張りめぐらせて増える厄介な草です。地下茎は細くやわらかいため、慎重に根を掘り上げる必要がありますが、地表近くに伸びているので深く掘る必要はなさそうです。
また、白い菊のような花が咲くフランスギクですが、群生すると大変きれいですよね。庭でも数少なく咲いているうちはあまり気にしていないかもしれませんが、タネを落としてすぐに全体に広がってしまい、ご近所や道路にも侵入していくので、花壇内で見かけたら除草した方がよいと思われる植物の一つです。
近年、より一層自然らしいふるまいの花壇やガーデンに人気が集まっています。あたかも自然の草原のような雰囲気の庭ですが、ち密な植栽デザインと計算に基づいて、知識と経験豊かなガーデナーによる細やかな管理の上に成り立っています。
育てている花が落としたタネで増えた株をそのまま生かしたり、大勢の人が雑草とみなす上記のような種類をあえて残してみたりして、そんな最先端の花壇に挑戦してみるのも花壇づくりの一つのスタイルです。
英国Writtle College(リトルカレッジ)にてガーデンデザインを学ぶ。現在は、苫小牧市にある「イコロの森」の勤務、ヘッドガーデナー 。設計からメンテナンスまで庭づくりの幅広い経験をもとに、宿根草ガーデンの管理・栽培等を担当。
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