第45回

ポタジェのつくり方.4 ~初心者にもおすすめ!実践的なデザイン例

今回のテーマは、初心者も今から取り組める、実践的な「ポタジェのデザイン例」です。“心と身体、環境にも優しい”ポタジェ(菜園)のつくり方を4回に分けてご紹介中。

~このコーナーでは、季節ごとの野菜やハーブ、果樹、お花など、相性のよいコンパニオンプランツを組み合わせながら育てて楽しむ“ポタジェのある暮らし”を紹介しています。お料理や花のクラフトも。

プロフィール

藤井 純子さん

「Pure Potager(ピュア ポタジェ)」代表。ポタジェ・アドバイザーとしてセミナー講師のほか、新聞・雑誌にて執筆活動を行なう。野菜ソムリエ、ハーバルセラピスト。

 

 

北海道もそろそろ野菜苗やハーブ苗などの定植時期になりました。前回まで紹介してきた「ポタジェのつくり方 1~3」を踏まえ、今回は、実践的なポタジェのデザイン例をご紹介したいと思います。

我が家のポタジェ。野菜とハーブ、果樹や花などの植栽、通路やアーチ、植物の背丈などで高低差をつけたレイアウトでお庭のような空間に!
我が家のポタジェ。野菜とハーブ、果樹や花などの植栽、通路やアーチ、植物の背丈などで高低差をつけたレイアウトでお庭のような空間に!

さっそく、ポタジェのデザイン例を見ていきましょう。ポタジェのイメージをデザイン図にしてみました。
宿根草と一年草を組み合わせることで、手入れの頻度が少なく、初めてでも育てやすいデザインです。広さは3m×3mの敷地を想定してみました。限られた空間を上手に生かして、作業がしやすく、いろいろな野菜やハーブの収穫も楽しめ、立体感と奥行きが感じられる素敵なポタジェです。

3m×3mの敷地を想定したポタジェのイメージ。いろいろな野菜やハーブを植えて、立体感と奥行きも感じられるように。(下記のデザイン例で、レイアウトした植物が育った8月頃のイメージ)
3m×3mの敷地を想定したポタジェのイメージ。いろいろな野菜やハーブを植えて、立体感と奥行きも感じられるように。(下記のデザイン例で、レイアウトした植物が育った8月頃のイメージ)

デザイン例を参考に!
ポタジェの植栽・レイアウト

①敷地面積と方位を確認
広さは3m×3mで設定。菜園の出入り口は南側に配置して、デザインを考えてみました。イラストの上方が北になります。

敷地3m×3m、9㎡(平方メートル)
敷地3m×3m、9㎡(平方メートル)

 

②通路の確保

やわらかな印象になるよう、導線となる通路は少しカーブをつけ、通路には麦やクローバーなどのタネをまきます。草丈が伸びたら、根元10cmほど残して刈り込み、植物の株元や通路に覆って利用します。

通路の幅は、50~60cmほどをとること! 人が通れて、作業もしやすい幅
通路の幅は、50~60cmほどをとること! 人が通れて、作業もしやすい幅

 

③宿根草を定植
宿根草は、ローメンテナンスで管理できます。野菜が日陰にならないよう左側(西)にレイアウトしました。

宿根草は、年々大きくなるため株間を広めにとる
宿根草は、年々大きくなるため株間を広めにとる

【 植栽デザイン 】
コモンマロウ(アオイ科) 1株
和名はウスベニアオイ。アオイに似た花を咲かせ、花色は紫~赤紫。草丈は1m以上になります。咳や気管支炎などの呼吸器系の症状を鎮めるハーブとして知られ、花をティーに利用します。

コモンマロウの赤紫色の花は、ポタジェを華やかな印象にしてくれる
コモンマロウの赤紫色の花は、ポタジェを華やかな印象にしてくれる
ドライハーブでつくる冷たいカルピスマロウティー
ドライハーブでつくる冷たいカルピスマロウティー

 

ネトル(イラクサ科) 2株
ビタミンや鉄分、カルシウムなどの栄養素が豊富。ヒスタミンを含むため、喘息や花粉症などのアレルギー症状を緩和する効果が期待できます。草丈は50~100cmほどになります。地下茎で広がり、株分けして増やすこともできます。ただし、生育旺盛なので植え場所は考慮を。

ネトルは地下茎で繁殖する
ネトルは地下茎で繁殖する

 

アジサイ(アジサイ科) 2株
花を乾燥させてリース作りにも。「秋色アジサイ」と呼ばれるものをセレクトします。秋色アジサイは特定の品種や種類のことではなく、花が退色すると、秋色=アンティークカラーの色合いに変化するアジサイのこと。昔ながらの品種に多いほか、改良品種では‛西安(シーアン)’が秋色アジサイに向きます。園芸店などで聞いてみるとよいでしょう。

花が咲き始めて少し経った頃に収穫する
花が咲き始めて少し経った頃に収穫する

 

ミョウガ(ショウガ科) 2~3株
敷地の中で日陰になる北西には、日陰を好むミョウガを植えます。株元の近くに花蕾が出てくるので、開花して中がやわらかくなる前に収穫。刻むと独特の香りがあり、薬味やつまとして添えたりします。

ミョウガは地下茎で広がっていく。一度植えると10年以上収穫できる。もしくは、早生品種を選んで植える
ミョウガは地下茎で広がっていく。一度植えると10年以上収穫できる。もしくは、早生品種を選んで植える

 

④入口付近は草丈を低く
南側に植物を植えるときは、奥へ日差しが届くよう草丈の低い植物を選びましょう。入口付近は手が届きやすい場所なので、リーフレタスやイタリアンパセリ、エディブルフラワー用のビオラ、アリッサムなどサラダコーナーにしてはいかがでしょうか。色合いをコーディネートしながら植えると花壇のような雰囲気になりますね。

レタスの収穫後は、小松菜や水菜、ラディッシュなどを植えて楽しめる
レタスの収穫後は、小松菜や水菜、ラディッシュなどを植えて楽しめる

【 植栽デザイン 】
ビオラ、ナスタチウムなどの一年草

ビオラなどの花をエディブルフラワーにする場合は、種子消毒されていないタネから育てるか、園芸店でエディブルフラワー用の苗を購入しましょう。また、自家採種したタネを利用すると安心・安全に食用として楽しめます。

春はアリッサム、ビオラ、コーンフラワー、夏はナスタチウム、カレンデュラ、ボリジ。ハーブ類の花も利用するとよいですね。

レタスとアリッサム(アブラナ科)。アリッサムは白い小花がこぼれるように咲く
レタスとアリッサム(アブラナ科)。アリッサムは白い小花がこぼれるように咲く
収穫したエディブルフラワーはサラダに!
収穫したエディブルフラワーはサラダに!

 

⑤奥に背の高い植物を!
奥に草丈のある植物を植えると菜園に広がりを与えてくれるので、キュウリをアーチに仕立てて植えたり、トマトを植えたりして高さを演出します。

ポタジェの奥に背の高いキュウリやトマトを植える。キュウリは5段目までの脇芽は取り除くとよい
ポタジェの奥に背の高いキュウリやトマトを植える。キュウリは5段目までの脇芽は取り除くとよい

【 コンパニオンプランツ 】
キュウリ(ウリ科)+チャイブ
キュウリのコンパニオンプランツとして株元にチャイブを定植。うどんこ病の予防に、通路にはエン麦のタネもまくとよいでしょう。


トマト(ナス科)+落花生+バジル
2m近くまで成長するトマトも奥の方に植えます。株元から20cmほどの場所に落花生(らっかせい)とバジルを植えます。

落花生は土寄せしながら育て、10月末頃に収穫する
落花生は土寄せしながら育て、10月末頃に収穫する

 

赤シソ+青シソ(シソ科)
赤シソと青シソを組み合わせることで、お互いの害虫を予防する効果が期待できます。15~20cm間隔で植えましょう。シソは薬味やシソジュースに重宝しますね。

赤シソの紫色はアクセントになってくれる
赤シソの紫色はアクセントになってくれる

 

⑥中間はほどよい草丈の植物
奥の野菜に日差しが当たるよう、中間には草丈50cmほどの野菜を植えます。自然な高低差ができ、ポタジェらしい雰囲気になります。

なだらかな植物の高低差が優しい印象を与える
なだらかな植物の高低差が優しい印象を与える

【 植栽デザイン 】
ズッキーニ(ウリ科)+ボリジ(ムラサキ科)
葉が大きく成長するズッキーニは、株間80cmほどをとりましょう。株間に受粉を助けてくれるボリジを植えます。うどんこ病の予防にエンバクのタネを周囲にまいておくとよいでしょう。ズッキーニは20cmほどの小さめサイズで収穫すると、秋ごろまで収穫を楽しめます。

ズッキーニは小さめサイズのうちにどんどん収穫して利用を!
ズッキーニは小さめサイズのうちにどんどん収穫して利用を!
星型の青紫色の花が美しいボリジ。ヨーロッパでは古くから「勇気を与える花」と信じられてきたそう
星型の青紫色の花が美しいボリジ。ヨーロッパでは古くから「勇気を与える花」と信じられてきたそう

 

食用ホオズキ(ナス科)
小さい実が成る品種は草丈が低いので、通路脇に植えましょう。ビタミンや鉄分が多い食用ホオズキは、スーパーフードの一つといわれいます。

食用ホオズキ。伸びた枝が地面につかないように、ヒモで誘引するとよい
食用ホオズキ。伸びた枝が地面につかないように、ヒモで誘引するとよい

ご自宅のお庭の広さに合わせながら、今回のデザイン例を少しでも取り入れてみるのはいかがでしょうか。わからないことがあったら、4回にわたって「ポタジェのつくり方」を詳しくお伝えしてきましたので、読み直してみましょう。実践に生かして、今シーズンのポタジェづくりを楽しんでくださいね!

 

次回は、通路などにおすすめの「緑肥」についてをご紹介します。

この記事を書いた人

藤井 純子

藤井 純子

「Pure Potager(ピュア ポタジェ)」代表。ポタジェ・アドバイザーとして道新文化センター札幌校などのセミナー講師のほか、新聞・雑誌にて執筆活動を行なう。また、ポタジェの魅力を一冊にまとめた「Green Finger ポタジェ~小さな庭が与えてくれる恵みと幸せ~」を執筆。「コーチャンフォーミュンヘン大橋店」で取り扱いのほか、HPに掲載のネットショップを利用。またはAmazonでも販売、「ポタジェ」で検索。

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