第46回

ポタジェの自然に優しい「土づくり」 ~残渣や緑肥などの利用

今回は、私自身も実践してきた 自然に優しい残渣(ざんさ)や雑草、緑肥などを利用した「土づくり」をご紹介します。
このコーナーでは、季節ごとの野菜やハーブ、果樹、お花など、相性のよいコンパニオンプランツを組み合わせながら育てて楽しむ“ポタジェのある暮らし”を紹介していきます。お料理や花のクラフトも。

プロフィール

藤井 純子さん

「Pure Potager(ピュア ポタジェ)」代表。ポタジェ・アドバイザーとしてセミナー講師のほか、新聞・雑誌にて執筆活動を行なう。野菜ソムリエ、ハーバルセラピスト。

 

 

ガーデニングや菜園で植物を元気に育てるためには「土づくり」が大切だとわかっていても、具体的にどうしたらよいのか迷うものですよね。
そこで今回は、私自身も実践してきた 自然に優しい残渣(ざんさ)や雑草、緑肥などを利用した土づくりの方法をご紹介します。

野菜の株元で育てているヘアリーベッチ
野菜の株元で育てているヘアリーベッチ

20年前に菜園を始めた当初から、自然に優しい栽培をしたかったので化学肥料や農薬、黒いビニールマルチを使用したことはありませんが、最初の3年ほどは馬ふん堆肥を入れ、石灰をまき、追肥を施すという一般的な有機栽培をしていました。

ただ、追肥や米ぬかをまいた途端に病害虫が増えていることに気がつき、そのことがきっかけで、できるだけ堆肥や肥料などを施さない方がよいこともあるのかも(?)と考えるようになり、残渣や雑草、緑肥などの自然素材と少量のバーク堆肥を使用し、育てる野菜・ハーブなどは少量多品種を混植する栽培スタイルになりました。
当時は今ほどネットが普及していなかったため、周囲の人から驚かれましたが、植物は変わらず元気に育って病害虫に悩むことも少なくなりました。
ここ8年ほどは土壌医検定や自然栽培なども学びながら、得た知識をポタジェに生かしています。土壌中の団粒構造(下記参照)を壊さないために有機物でマルチングをして、不耕起栽培を試しているところです。

アスパラの残渣(ざんさ)もマルチングに利用している
アスパラの残渣(ざんさ)もマルチングに利用している

 

・団粒構造とは・・・ 

土壌粒子(固相)がくっつき塊になっていて、空気や水が入りやすい状態のこと。有機物を加えて微生物が住みやすい環境にすることが大切です。理想的な三相分布は、土壌粒子(固相)45~50%、水分(液相)20~30%、空気(気相)20~30%といわれています。

団粒構造の土壌は、植物や微生物が住みやすい
団粒構造の土壌は、植物や微生物が住みやすい

 

・単粒構造とは・・・ 

土が細かくサラサラとしている状態のこと。耕運機で過度に耕したり、化学肥料などを使用したりすることで、微生物が住みつかず土が瘦せてきてしまいます。

単粒構造の土壌は、植物が育ちにくくなる
単粒構造の土壌は、植物が育ちにくくなる

残渣と雑草、緑肥のマルチについて

【 マルチを行なうメリット 】

雨が降ったときの緩衝材になり、土壌が流れるのを予防
土壌表面を覆うことで、乾燥を予防
土壌表面を覆うことで、微生物や土壌動物が増え、土が肥沃になる効果

 

●残渣マルチ
マルチングとは、ビニールフィルムなどの資材で土壌を覆うことをいいますが、「残渣マルチ」は菜園に育っているトウモロコシやムギなどを10~20cm程度に切って表土を覆う方法です。菜園を始めた当時、実家がリンゴ農家をしているという知人から、トウモロコシの茎を株元に敷いてマルチングするとよいと聞き、取り入れたのが残渣マルチの始まりでした。

さっそく試してみたところ、泥はねが軽減したり、雑草が抑制されたり、ミミズなどの小さな虫たちが残渣を分解して、土を肥沃にしてくれることに気づきました。それから菜園で収穫した植物の残渣や麦、緑肥、雑草などを活用するようになりました。
ただし、キャベツやキュウリ、トマトなどの残渣は水分が多いため、乾燥させたり、堆肥化してから使用するようにするのがおすすめです。また、病気にかかった植物は入れないようにしましょう!

土の上に置いただけでルバーブの葉が分解され、わずかに葉脈だけが残っている
土の上に置いただけでルバーブの葉が分解され、わずかに葉脈だけが残っている
収穫が終わったトウモロコシ(イネ科)の茎は、10~20cmほどに切って乾燥させてから株元や通路などに置いている
収穫が終わったトウモロコシ(イネ科)の茎は、10~20cmほどに切って乾燥させてから株元や通路などに置いている
大根のタネをまいたあと、泥がはねないようにムギワラ(イネ科)を敷いて育てている
大根のタネをまいたあと、泥がはねないようにムギワラ(イネ科)を敷いて育てている

 

●雑草マルチ 
雑草を見るとついつい根ごと抜いてしまいがちですが、根を残して地上部を刈り取って10~20cm程度に切り、株元や通路に敷きます。雑草がない菜園はきれいに見えるものの、土がむき出しになることで土が痩せ、かたくなってしまうというデメリットがあります。また、雑草は土壌中のミネラルをためているので、草を持ち出してしまうと土が痩せる原因にも。刈り取った草をマルチにすることで、土を肥沃にする効果が期待できます。
ただし、スベリヒユやツユクサなど水分の多い雑草は、乾燥させてから使うようにしましょう。どの雑草が自分の菜園に最適なのか、様子を見ながら取り入れてみるのも一つの方法です。

雑草(スベリヒユ)とムギワラを活用したインゲンの栽培
雑草(スベリヒユ)とムギワラを活用したインゲンの栽培

地下茎で育つスギナは、酸性土壌を好んで生えてきます。根元から切り、そのまま土に置いて乾燥することで、土を中和する作用があるそうです。長年その方法を実践していますが、極端にスギナが広がることはなく、効果を実感しています。また、スギナは土壌の必須微量要素であるケイ素を多く含んでいるため、細胞を強くしてくれるそうです。

「スギナ茶」は爪や髪を丈夫にするといわれる。ただし、腎臓疾患のある方は飲用しないこと!
「スギナ茶」は爪や髪を丈夫にするといわれる。ただし、腎臓疾患のある方は飲用しないこと!
スギナもマルチに利用。根元から切り、そのまま土に置いて自然乾燥
スギナもマルチに利用。根元から切り、そのまま土に置いて自然乾燥

 

●リビングマルチ(植物マルチ、カバークロップ)
リビングマルチとは、菜園の畝(うね)や通路部分で緑肥を育てることで、雑草の抑制や病害虫予防、土壌中に有機物を加えて土壌改良に役立つなどのメリットがあるといわれています。
現在、私も連載に寄稿をしている「タキイ種苗 友の会」の会報誌「はなとやさい」で、同じく連載中の「有機栽培のすすめ」筆者 内田達也さんの記事を参考に、今シーズンは通路にリビングマルチを取り入れようと考えています。

【 リビングマルチのメリット】
雑草の発生を抑制
天敵や病原菌に拮抗する菌の住みかとなり、病害虫を予防
緑肥の根が伸びることで、排水性の改善に役立つ効果
刈った緑肥を表土に敷くことで、有機物が供給されて微生物などが増え、土が肥沃になる効果

 

「リビングマルチ」として利用するのは、「緑肥作物」と呼ばれるイネ科とマメ科のものが多いです。どちらも草丈が高くなったら根元を適度に残して刈り込み、敷き草にします。

【 イネ科の緑肥作物 】
イネ(稲)は根の量が多いため、物理的に土壌をやわらかくし、余分な肥料分を集めるクリーニングクロップスとして活躍します。刈り取ったあとにすき込むことで、土に大量の有機物を供給することができ、土づくりに役立ちます。ウリ科やエンドウ類に発生しやすいうどんこ病にも効果が期待できます。

 

●エンバク 
草丈50~150cmになります。草丈が伸びたら根元を10cmほど残して刈り取り、通路に敷きます。植物の根元に敷くと、泥はねや土の乾燥を防いでくれます。

エンバクは春にタネをまき、軽く覆土して育てる
エンバクは春にタネをまき、軽く覆土して育てる

 

●オオムギ(大麦)
オオムギは本来、秋にタネをまきますが、春から初夏にまくと草丈が高くならず、地面を覆うように放射状に葉を広げて土を保湿してくれます。暑さに弱いので、真夏には自然に枯れていくそうです。

ムギ(麦)が発芽した様子。伸びた根が排水性を高めてくれる
ムギ(麦)が発芽した様子。伸びた根が排水性を高めてくれる

 

【 マメ科の緑肥作物 】
根に共生する根粒菌の働きで空中の窒素を固定し、土壌を肥沃にします。地上部を刈ってすき込みます。葉や茎に窒素分を多く含むため肥料効果も期待できます。

 

●ヘアリーベッチ
草丈は50cmくらい。ほふく性でつるを絡ませながら広がり、紫色の美しい花が咲きます。アレロパシー効果で雑草の発生を抑制する作用が期待できます。

ヘアリーベッチの花。同じマメ科のフジ(藤)の花に似ている
ヘアリーベッチの花。同じマメ科のフジ(藤)の花に似ている

 

●クリムソンクローバー、白クローバー
草丈は50~100cmになります。タネができると雑草化しやすいので、タネができる前にすき込むようにしましょう。クリムソンクローバーは赤い花が咲くので、景観作物としても人気があります。

クローバーの葉は押し花にしても素敵
クローバーの葉は押し花にしても素敵
クローバーの根に丸い根粒菌がついているのがわかる
クローバーの根に丸い根粒菌がついているのがわかる

残渣や雑草、緑肥を使用する際は、土質や日当たり、風などそれぞれの栽培環境は異なるので様子を見ながら取り入れるようにしましょう。土づくりはすぐに効果が見えるものではありませんが、まずは自然を信じて、生かしてみるという視点が大切なのかもしれないと感じています。ビニール資材や肥料、農薬を使わず、菜園に育っている残渣や雑草、緑肥などで土づくりができたら、環境にもお財布にも優しいですね。

 

次回は、「エディブルフラワー」を利用した、おしゃれでおいしいパンケーキをご紹介したいと思います。

この記事を書いた人

藤井 純子

藤井 純子

「Pure Potager(ピュア ポタジェ)」代表。ポタジェ・アドバイザーとして道新文化センター札幌校などのセミナー講師のほか、新聞・雑誌にて執筆活動を行なう。また、ポタジェの魅力を一冊にまとめた「Green Finger ポタジェ~小さな庭が与えてくれる恵みと幸せ~」を執筆。「コーチャンフォーミュンヘン大橋店」で取り扱いのほか、HPに掲載のネットショップを利用。またはAmazonでも販売、「ポタジェ」で検索。

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