
わたしの庭どうぐ <第6回> 雨のようなシャワーの「セクターノズル」
武藤 良幸
ガーデニングを快適に! 使いやすい道具やおしゃれなガーデニングウェアを身に着けて、庭しごとを楽しく行ないましょう。「庭どうぐ」の基本の選び方、豆知識、おすすめなどを、園芸グッズの企画・開発も行なう武藤良幸さんが伝授します。
徳川家光が将軍だった時代、江戸から遠く離れた北欧フィンランドの首都ヘルシンキのさらに100kmほど西にあるフィスカースという村で、小さな鍛冶屋さんが開業しました。そこで成功を収めた鍛冶屋さんは村の名を取って「フィスカース(FISKARS)」という会社を起こし、フィスカース社は世界に知られる大企業へと発展しました。剪定バサミやショベルなどの庭道具から日用品、調理器具、林業や建設業で活躍するプロツールなどなど、庭から家庭、山の中まで、幅広く活躍する製品を現在も製造販売しています。
そんなフィスカースの庭道具を愛用するガーデナーは多く、彼らはフィスカース製品の機能性と一緒にデザインにも魅力を感じているようです。
フィスカース製「ガーデンナイフ」は、シルバーのコテ部分は軽くて錆(さび)に強いアルミ製です。剣のような鍔(つば)があり、フィスカースカラーと呼ばれているオレンジとブラックの色づかいが特徴です。
ナイフとはいうものの、葉や枝をスパッとカットできるような鋭い切れ味はなく、どちらかというとガリガリゴリゴリとコテを押したり引いたり、回しながら雑草や根を断ち切る使い方をします。
ガーデンナイフの使い道は主に3つ。除草、そして移植と株分けです。
コテの側面にあるノコギリみたいなギザギザの粗い刃は、根を土ごとゴリゴリと切断します。もう片方のナイフの刃みたいな側面はコテを寝かせたまま地面に当て、土ごと雑草を削ぎ取ります。さらにコテの先端にある窪みは雑草の根元を引っかけ、コテを回転させることで雑草を引き抜きます。
正直なところ、除草用としてはもっと効率的な庭道具がたくさんあるし、除草よりも宿根草の株分けや移植をするときの根切り用として使っているガーデナーが多いようです。鋭さのない粗い刃だからこそ、大きな摩擦がかかる土の中で刃こぼれを心配せずに根を切ることができ、刃に石が当たろうと水びたしの土の中だろうと、ガシガシと使えるアルミ素材のタフさと軽さがガーデナーの心をつかんでいるのかもしれません。
ただし、土に挿して使うタフなガーデンナイフとはいえ、ショベルみたいに土を掘るのは苦手です。コテ自体が土をすくう形になっていないのと、かたい土を掘るために必要なテコの原理を利用できるだけの強度は備わっていないからです。かたい土を無理やり掘り起こそうとハンドルに力を入れると、壊れてしまうことがあるためご注意ください。
「momiji合同会社」代表。「momiji(もみじ)」は人と園芸、人と庭をつなぐための会社。若い園芸家や庭師を育て、彼らの道具や新しいガーデニンググッズの企画・販売を行なう。また、おしゃれな道具など介し、園芸・ガーデニングの普及活動に努めている。
書いた記事を見る\ このページをイイネする /
※会員ログイン後はお気に入り登録されます。
\ この記事のタグ /