
今週の花(6月29日) 百花繚乱の始まり~バラ、ハニーサックルほか
走川 貴美
白い恋人パークから「ローズガーデン」で咲くバラたちや、シーズンごとのお手入れの様子などをお伝え。北海道で育つバラの品種や、実際に育てて感じるその性質など、ぜひ参考にしてください。プロならではのテクニックなども聞けそうです。
9月のお彼岸あたりから急に北海道の秋らしい気温になり、作業もしやすい気候になりましたね。皆さんのお庭では、秋バラが咲くこの時期までバラの葉を病気などで落とすことなく、管理できましたでしょうか?
バラを育てている環境や品種によってそれぞれ違うと思いますが、なるべくシーズンが終わるまでは葉を落とさずに、健全にバラを育てることができるのがベストです。なぜなら、これから訪れる長く寒い冬の季節を迎えるにあたって秋まで葉が落ちていなければ、たくさん光合成をし養分を蓄えて、株を充実させることができます。そうすることで北海道の寒い冬を乗り越えることができます。
白い恋人パークのローズガーデンでは、現在無農薬で管理を行なっていますが、殺菌剤などの化学薬品を使っていたときよりも、バラの活力剤(微生物酵素剤)を散布している今の方がシーズンを通して病気にかかりにくくなり、葉を落とさず健全にバラが育ってくれています。
病気などで秋まで葉を落とさないで管理ができているので、四季咲き性のバラは三番花まで咲かせる体力が残っており、シュラブ(半つる性)のイングリッシュローズは夏から秋にシュートをいっぱい出して、翌年に花を咲かせる枝を伸ばし生育してくれています。
健全にバラを育てることができれば、バラの管理もラクに楽しく行なえると思います。また、ご自身の負担にないようにどこまで手をかけられるかも考えて、楽しく育てられればと思います。
ローズガーデンに植えているイングリッシュローズは、シュラブ(半つる性)樹形と返り咲き性のバラが多いので、秋バラの時期は四季咲き性のバラと比べるとどうしても花数は少なくなってしまいます。
6月の爆発的に咲く一番花に比べると、秋バラは花数も少なく花も小ぶりですが、寒暖差のおかげでゆっくりと生育する秋バラは花色も濃く出て、香りも強く香り、花の姿もギュッと締まってバラ本来の魅力的な姿を見ることができます。
一番花(6月)と三番花(秋花)でどのくらい花色、花形が違うのかいくつかの品種についてご紹介していきましょう。
●ハッピー チャイルド
一番花:花色は外側が白く、花の中心部に向かってだんだん濃くなるレモン色で、クシュクシュっとしたロゼット咲き。一番花の開花時期は少し遅めに咲き、樹形がコンパクトでまとまりがよいので株全体に花を付けます。
秋花:花色は外側が薄い黄色から中心部に向かって濃いはっきりとした純黄色に開花。花形はギュッと引き締まって、形の整ったカップ咲きからロゼット咲きへと開花します。香りは黄色の品種に多いティーの香りがします。
●エブリン Evelyn
一番花:香りが強いバラとして有名なエブリン。一番花は大輪に咲き、外側の花弁は白色で中心に向かってアプリコット色が濃くなります。花はカップ咲きからロゼット咲きに形を変えていきます。枝ぶりが強く上向きに花を付け、「香りを感じてください」と言っているかのように咲いてくれます。
秋花:秋バラはアプリコット色が一層濃く出ますが、一番花に比べて花の大きさは小ぶりです。返り咲き性で秋は花数も少ないですが、なんといってもエブリンはいつの時期でも香りがよいです。特にフルーツの香りがより強く香る秋に嗅いで欲しいバラです。
●ルイーズ クレメンツ Louise Clements
アメリカ John Clements(作出:1996年)
シュラブ(S)/四季咲き/ロゼット咲き/1.2×0.9m
一番花:オレンジ色の花色は暑い時期はすぐにピンク色に退色していきます。平咲きのロゼット咲きで蕾(つぼみ)をたくさん付けるので、摘蕾をしないと花が小さく咲いてしまいます。
秋花:秋バラとして真っ先に紹介したい品種の一つ。シュラブローズ(半つる性)ですがあまり大型にならず、繰り返し咲き性も強いので、春・夏・秋と咲いてくれます。秋の花が最も美しいと思える、はっきりとしたオレンジの花色とクラシカルなロゼット咲きの花形。寒暖差のおかげで花期も長く、退色せずに鮮やかな花色のまま長く咲きます。「この品種が欲しい」とお客様によく聞かれますが、残念ながら現在は手に入りにくい品種となっています。
●ザ ダーク レディ The Dark Lady
シュラブ(S)/四季咲き/ロゼット咲き/0.9×1.0m
一番花:花色は少し明るめのローズピンクから朱色に変化。花形はやや乱れたロゼッタ咲きで、大輪の花はとてもインパクトがあります。花の重みで少しうつむき気味に咲きます。
秋花:一番花と同じバラかと思うほど、花色は魅力的なダーククレムゾン色になり、花形も整ったロゼッタ咲きに。秋は一層うつむき加減に咲きます。写真を撮るのに花を覗き込むように近づけば、オールドローズの香りが強く香ってきます。
一番花と秋花の違いは、意外と見た目にもわかるものですね。お庭に咲くバラを写真に残し、比較してみるのも面白いかもしれません。そのためには、まずは秋まで葉を落とすことなく健全に育ててくださいね。
写真ではバラの香りをお伝えできないのが残念ですが、香りのよい品種が多いイングリッシュローズが、秋には一層強く香ります。秋バラの香りに包まれていられるのも、白い恋人パークのローズガーデンではあと数日となりました。11月に入ってすぐにローズガーデンのバラは越冬作業に入り、冬のイルミネーションへと変わります。今シーズン最後のバラを見たい方は、ぜひ早めに白い恋人パークへお越しください。
2007年に石屋製菓入社。それまでは植物に興味がなかったが、入社を機に植物を手がけることに目覚める。「白い恋人パーク」のローズガーデンを含め、園内のすべてのバラを担当する。イングリッシュローズをメインに管理を行ない、バラの魅力を広めている。
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