第16回

第16回 草花と四季をめぐる本 ~「ふしぎなガーデン 知りたがりやの少年と庭」

植物のことを学び・知ることはもちろん、ゆったりとした気持ちで花を眺め、癒される、そんな「本」を、ブックコーディネーター・ライターの尾崎実帆子さんが紹介していきます。

「ふしぎなガーデン 知りたがりやの少年と庭」 

ピーター ブラウン (著)、千葉 茂樹(翻訳)
ブロンズ新社(2010/1/25)、ISBN978-4893094889
ピーター ブラウン (著)、千葉 茂樹(翻訳)
ブロンズ新社(2010/1/25)、ISBN978-4893094889

ニューヨークのマンハッタン・ウエストサイド地区にある「ハイライン」という都市公園は、かつて実際に走っていた高架鉄道のなごりです。1980年を最後に列車は廃止され人々からも忘れ去られた頃、公園どころか木も草むらもなかったその街で物語は始まります。

 

知りたがりやの男の子リーアムは、ある日古い階段を見つけて上がります。そこで見つけたのは、古い線路の合間で枯れかかった草木や花。リーアムは植物に水をやったり、伸びた枝を切ったり、庭師のまねごとやってみます。やがて植物たちは元気になり「草も木も、じぶんたちがほんものの庭になったような」気がするのでした。リーアムに負けず劣らず“とっても知りたがりや”な植物たちは、長い線路を探検したくてたまりません。雑草やコケを先頭におしとやかな草花までもが、線路の先へ先へと進んでいきます。植物が“知りたがりや”という表現がリーアムと重なって、ともに同じ目線で探検しているかのよう。

やがて冬になり線路の庭は雪にすっかりおおわれます。リーアムは本を読んで庭づくりを学び、庭道具を手に入れて春に備えていました。そして春、リーアムは学んだことを実践していきます。ぐんぐんと元気になった植物たちは、線路を超えて、街のあちこちまで広がっていきます。

 

街に植物が広がるとともに増えたのはたくさんの庭師たち。水やりする人、草を刈る人、木を剪定する人。さらに、緑の広がる公園でピクニックをしたり走り回る子、街なかで木登りしたり絵を描いたりする人々など、ページをめくるたびに街と人々に彩りと活気が満ちてくる様子が描かれています。

植物や自然のたくましさとともに、木や草花が私たち人間にもたらしてくれる活力と癒しの力をあらためて感じます。小さなひとりの子どもの好奇心や行動が、大きなものを動かしたという事実にも感動します。この物語を知ったうえで、いつか「ハイライン」を訪れてみたいものです。

「ふしぎなガーデン 知りたがりやの少年と庭」 
「ふしぎなガーデン 知りたがりやの少年と庭」 

この記事を書いた人

尾崎 実帆子

尾崎 実帆子

ブックコーディネーター・ライター。「Sapporo Book Coordinate (さっぽろブックコーディネート)」代表。「適“本”適所」をコンセプトに、カフェやショップ、商業施設、イベント会場など、街のさまざまな場所で本を買える仕組み作りに注力。本にまつわるイベントを企画開催したり、本の楽しさを伝える書評執筆を行なう。北海道新聞「親と子サンデー ほん」を2012年より執筆ほか、絵本・児童書の書評掲載、雑誌やラジオなどのメディアで書評掲出。札幌インストラクターガイド登録講師、絵本・児童文学研究センター正会員。

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