第1回

「庭どうぐ」の基本や選び方、おすすめなど<第1回>剪定バサミ

ガーデニングを快適に! 使いやすい道具やおしゃれなガーデンウェアを身に着けて、庭しごとを楽しく行ないましょう。「庭どうぐ」の基本の選び方、豆知識、おすすめなどを、園芸グッズの企画・開発も行なう武藤良幸さんが伝授します。

「フェルコの剪定バサミ」

園芸道具を専門とする私のもとへは、毎年のように、初心者ガーデナーさんから「最初はどんなハサミを用意したらいいの?」という質問があります。
そこで私はいつも、「まずは、先が細いクラフトバサミと剪定バサミの2本を用意しましょう」と伝えています。

 

先が細い「クラフトバサミ」というのは、フローリストもよく使う小型軽量の園芸バサミで、例えば、ブーケの中からカスミソウの花を1輪だけをカットするような、繊細な使い方を得意としており、花壇やキッチンガーデンで大活躍します。
一方の「剪定バサミ」は、固い茎や樹木の枝をカットするためのタフなハサミで、ノコギリは使うまでもない直径1~2㎝ほどの枝をカットするのが得意。
この2本は、糸切りバサミと裁ちバサミ、あるいはピンセットとペンチの違いに似ているかもしれませんね。

 

今回、このタフな「剪定バサミ」について、日本をはじめ世界に数多あるメーカーから「フェルコ(FELCO)」というスイス発の剪定バサミを紹介します。クラフトバサミについては、また次の機会に。

フェルコ(FELCO)の剪定バサミは憧れだった。手にしたときから、20年以上も愛用
フェルコ(FELCO)の剪定バサミは憧れだった。手にしたときから、20年以上も愛用

世界中のガーデナーに愛用される、フェルコの剪定バサミ。その品質精度の高さからか、剪定バサミ界のベンツ(?)と形容する人もいるようですが、機能や構造といった難しい解説は抜きにしても、手に取るだけで不思議と気分が上がる、素敵な魅力を備えた「庭どうぐ」だと思います。もちろん、切れ味も耐久性も世界トップクラス。

 

私が初めてフェルコを手にしたのは、今から 20 年以上前。園芸家・造園家として一人立ちしたときに自分へのご褒美として買いました。〝憧れのハサミ″を手にしたときの嬉しさは、あれから3代目のフェルコを使う今も、ずっと続いています。

手にしっくりとなじむ感じが、なんとも言えない魅力。力も伝わりやすく、少しのお手入れでも切れ味が抜群
手にしっくりとなじむ感じが、なんとも言えない魅力。力も伝わりやすく、少しのお手入れでも切れ味が抜群

フェルコ製品は、ホームセンターで気軽に買える剪定バサミよりも割高ですが、プロのガーデナーも使っている価格帯は 6千円~1万円ほど。ガーデニングを長く続けたい意志と予算に少しだけ余裕があれば、初心者にもぜひ持ってほしい剪定バサミです。

 

サイズやパーツの違いで数種のバリエーションがあり、手が小さめの人に人気の型番は、全長195㎜の「フェルコ 6番」。手が大きい人なら全長210㎜の「フェルコ 4番」あるいは、全長215㎜の「フェルコ 2番」が人気です。

 

フェルコだけでなく剪定バサミの多くは、ハンドルが自動で開くスプリングが仕込まれており、ハンドルが開ききった際に手から大きくはみ出ないサイズが理想で、サイズを知る目安となるのが「全長」です。全長は1㎝違うだけでも人の手に大きく影響しますし、全長が短いほど握りやすくて軽量ですが、カットできる枝は細いものに限られてしまいます。

 

剪定で直径1~2㎝以上の枝をカットしたい場合、平均的な手の大きさの女性なら全長180~200㎜、男性なら200~220㎜の範囲がおすすめ。もちろん、買うときに手に取って試すのが一番なのですが、パッケージに入っていて試せなかったり、通販を利用するときの目安として全長を参考にしてみてください。

フェルコ 6番、全長195㎜。手の小さい人向き。軽量で、全体に力をかけやすいグリップ形状
フェルコ 6番、全長195㎜。手の小さい人向き。軽量で、全体に力をかけやすいグリップ形状
フェルコ 4番、全長210㎜。手の大きな人は4番または2番を。ほどよいサイズ感
フェルコ 4番、全長210㎜。手の大きな人は4番または2番を。ほどよいサイズ感
フェルコ 2番、全長215㎜。手の大きな人にも、なじみやすいグリップ形状
フェルコ 2番、全長215㎜。手の大きな人にも、なじみやすいグリップ形状
「FELCO」ロゴ。カッコよくて、はじめて自分のフェルコを手にしたときはとても嬉しかった
「FELCO」ロゴ。カッコよくて、はじめて自分のフェルコを手にしたときはとても嬉しかった

さて、お気に入りの剪定バサミを手に入れたら、できるだけ長く使いたいですよね。
そこで大事なのが、ハサミのメンテナンス。きちんとメンテナンスしていれば10年や20年、それ以上だって使い続けことができます。でも、「ハサミのメンテナンス=刃を研(と)ぐこと」とイメージする人は多いと思いますし、そもそも刃を研ぐのって難しそうで、面倒くさいですよね。

 

私の経験から自信を持ってお伝えしますが、剪定を専門にする植木屋さんでもないかぎり、フェルコのハサミは無理して研がなくても大丈夫。木に登って、一日何時間も固い枝を切り続けていた頃の私が刃を研いでいたのは、2~3年に1度でした。

 

ご自身のお庭で使う程度なら、使ったその日の汚れを拭き取るだけでも十分です。研ぎに慣れていない人が、見よう見まねでシャープナーや砥石(といし)を使った結果、切れ味やハサミ本来の精度を落としてしまった例を幾度となく見てきました。

 

「なんだか切れ味が鈍ってきたな」と思ったら、まずは刃の汚れを落としてみましょう。それだけで切れ味が戻ることがとても多いです。

もし園芸刃物専用の洗浄剤やオイルがなければ、アルコールティッシュで汚れを拭き取り、その後はオリーブオイルやベビーオイルのようなベタつきにくい油分で、刃の表面をコーティングしてあげましょう。

メンテナンスで見た目もきれいに、切れ味を維持しながら何年も長持ち。欠かせない「庭どうぐ」に
メンテナンスで見た目もきれいに、切れ味を維持しながら何年も長持ち。欠かせない「庭どうぐ」に

また、刃こぼれしてしまっても大丈夫。フェルコ製品は全部品を1個から購入できるので、刃だけを交換したり、フェルコ専門のメンテナンス工房(https://hamono310.com/felco/)にハサミを送って、専門家のメンテナンスを利用することもできます。

 

冬前の今の時期は、ガーデナーの皆さんは庭の片づけに忙しくしていることでしょう。剪定バサミ一つでも、快適に、作業の効率アップにもつながりますので、ぜひよい道具を手にしてみてください。

 

●写真協力:一部の写真は、FELCO日本総代理店 昭和貿易社の協力

この記事を書いた人

武藤 良幸

武藤 良幸

「momiji合同会社」代表。「momiji(もみじ)」は人と園芸、人と庭をつなぐための会社。若い園芸家や庭師を育て、彼らの道具や新しいガーデニンググッズの企画・販売を行なう。また、おしゃれな道具など介し、園芸・ガーデニングの普及活動に努めている。

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